高校の保健室の先生・藤原の夢に、交通事故で意識不明の生徒・咲が現れ、がんばっていたコーラス部の発表会を見に行くよう頼む。藤原は、子供のころ事故で一人生き残り、生きている実感を持てないでいた。咲によれば、藤原の意識が自分のところに来るのだという。「先生、死にたいの?」と問われて……!? そのころ、気分が悪いと保健室によく来るようになった女子生徒・ユリコは、コーラス部で咲の代役を頼まれていたが……!?
高校の保健室の先生・藤原の夢に、交通事故で意識不明の生徒・咲が現れ、がんばっていたコーラス部の発表会を見に行くよう頼む。藤原は、子供のころ事故で一人生き残り、生きている実感を持てないでいた。咲によれば、藤原の意識が自分のところに来るのだという。「先生、死にたいの?」と問われて……!? そのころ、気分が悪いと保健室によく来るようになった女子生徒・ユリコは、コーラス部で咲の代役を頼まれていたが……!?
進路に悩む高2の志麻。唯一の心のよりどころは、同級生の彼女、牧野の存在。ある日、ついに牧野のお部屋訪問のチャンス! しかし、そこで見たものは…牧野の正体は、人間のかたちをした「宇宙船」だという事実…。故障のため地球に不時着、人間の姿に擬態して、再び旅立つ日を待っていたという牧野に、志麻はショックを受ける。付き合っていたあの日々は、いったいなんだったのか? 間もなく、牧野が地球を去る日がやってきて…。
前回の奨励賞からジャンプアップ、見事にデビューを掴んだ篠田さん。これまでの投稿作3作ともに、奇想天外なアイディアで、編集部をうならせました。今作のよいところは、アイディアが不思議でも、描く世界はごく普通の日常だということ。宇宙人の造形の素朴さもあいまって、物語全体が優しさに溢れていました。主人公の志麻と宇宙船の恋愛エピソードが少しでもあれば、二人の別れがさらに盛り上がったと思います。次回作、期待しています!
人の話に合わせることだけが取り得のタカコ。上司からは聞き上手ともてはやされるが、本音を語らないことに、同僚からは空っぽな女だとなじられる日々。タカコは体の中にいる「金魚」に本音を乗せて吐き出し、心のバランスをとっていた。しかしその「金魚」も、タカコの中では息苦しくなり、出て行ってしまう。その代償として、タカコのお腹には大きな穴が……。新たな金魚を求めて金魚屋に行ったタカコは、そこである少年に出会い……。
前回に続き、奨励賞獲得の元本さん。金魚、穴を使うといったこれまでのお話とは一線を画す表現方法で、深層心理に深く迫った意欲作でした。絵のタッチの変化でだいぶ見やすい画面になった一方で、主人公の心理描写が観念的で、これまでに比べ話についていくのが若干難しいものになってしまったことが残念です。作品の敷居をもう少し下げ、より多くの読者を獲得できるようなエンターテイメントに昇華できるよう、改善を目指して下さい。
繊細な表現と、着想の面白さが魅力的な作品でした。とくに、やる気のない保健室の先生・藤原のキャラクターが秀逸。代役のプレッシャーから保健室へ来るようになったユリコへ「思う存分 逃げればいい」と語り、それが逆にユリコが覚悟を決めるきっかけになり、そのユリコの行動がまた、藤原にも作用して……。エピソードが連なり、独特な雰囲気の中にも、コアなメッセージが伝わりました。これからの活躍が楽しみです!!